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カイラル超伝導体における新奇量子現象

 クーパー対が内部自由度(スピン成分S や軌道成分L)を持つ異方的超伝導体は、基底状態やその励起状態が大変興味深い。しかし、ミリメートルサイズの試料ではその内部自由度に起因したドメインが形成されるために、異方的超伝導体に特有な物理現象が平均化され、観測できない可能性がある。そこで単一ドメインサイズの試料における物性実験に注目している。
 
        ClO4.bmp
                                                                  
図1.マルチドメイン試料とシングルドメイン試料の模式図、μmサイズの擬1次元有機導体(TMTSF)2ClO4
 
特に、私たちはカイラル超伝導体におけるトポロジカルな量子現象に興味を持ち、その観測を目指している。 
 
 Sr2RuO4は、様々な実験結果からスピン三重項(S=1)、カイラルp 波(L = 1) の存在が強く示唆される超伝導体である[1]。また、カイラル単一ドメインサイズは数十マイクロメートル程度と報告されている。そこで私たちは、微細加工技術により作製した単一ドメインサイズのSr2RuO4 を用いて電子輸送測定を行っている。図2右はT = 96mKでab 面へ垂直に磁場を印加した時のI -V 特性の結果である。全てのI -V 特性において発生電圧V が印加電流I に対して偶関数となっている。また外部磁場に応答していることから超伝導状態の本質的な物性を観測していると考えられる。この結果は単一ドメインサイズにすることによって初めて明らかになったパリティの破れたI -V特性である。我々はこの興味深い物理現象の起源が試料端におけるマヨラナフェルミオンの励起であることを提案している[2]。
SROsample.bmpSRO_IV.bmp            
図2.電子ビームリソグラフィーにより電極付けされてSr2RuO4試料とパリティの破れた電流-電圧特性
 
 
参考文献
[1]A. P. Mackenzie, and Y. Maeno, Rev. Mod. Phys. 75, 657 (2003).
[2]H. Nobukane, A. Tokuno, T. Matsuyama, S. Tanda, Phys. Rev. B 83, 144502 (2011).

 

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